こちらのMOLS magazineを知ったのは、2023年11月23日〜26日にかけて東京都現代美術館で開催されたTOKYO ART BOOK FAIR 2023でした。国内外から約300組のアーティストや出版社らがブースを出展するという、紙好きにはたまらないイベントなのですが、その中で「knew as new」というアポイント制の書籍セレクトショップのブースで紹介してもらいました。具体的には、「ベルリン発のドキュメンタリー&カルチャーマガジン」と銘打って、創刊号の「MOLS magazine Issue 1 “BORDER”」が展示されていたのです。
これが非常に素晴らしくてですね、一気に魅了されてしまったわけです。メインビジュアルはフランス在住のアーティスト・Petr Davydtchenkoさんの作品で、3年間ひたすら轢死した(列車や自動車にひかれて死んだ)動物の死骸だけを食べて生活するという「Millenium Worm」プロジェクトについてインタビューした記事が掲載されていました。
他にも、アングラな作品を発信している複数のアーティストへのインタビューや同行記録などが掲載されており、非常に高い熱量を冊子から感じ取った次第です(創刊号の詳細についてはknew as newのショップページをご覧ください)。
アートブックフェアなのでぜひ購入したかったのですが、残念ながら2023年3月に完売してしまったとのこと。聞くと、100部しか生産していなかったと言います。最初から情報をキャッチできていなかった自分のアンテナ力の低さを呪いつつ、2024年に次なる冊子を販売する予定とのことで、そちらのリリースを心待ちにすることにしました。
それから約3ヶ月後、新宿のアートスペース・WHITEHOUSEで開催された総合アートイベント『GANRA Art Festival』にて、無事に第2号となる冊子「MOLS magazine ISSUE 2. GANRA」を購入できました。このGANRA Art Festivalは、MOLS magazineが主催するイベント。ISSUE 2でインタビュー記事が掲載されているアーティスト6組によるビデオアート作品を日本で初上映し、また初来日のアーティストらによるライブでのボディーパフォーマンスも行われるとのことだったので、どちらのチケットも購入してワクテカ気分で参加したという、そんな流れでの購入体験でした。
※イベントの様子は当メディアのA面サイトであるLoveTech Mediaにてレポートを公開しました!
GANRAとは、「完全なる自律性」を意味する言葉とのこと。政府や企業、そらから無意識に検閲の主体となっている一般消費者からの完全なる自律性を模索しながら、以下6組のアーティストと、パリで毎年開催されるコンテンポラリービデオパフォーマンス特化の国際芸術祭「OPYUM」の仕掛け人へのインタビュー記事が掲載されています。
- Rico Mehler
- Shalva Nikvashvili
- Aun Helden
- Thiago Dezan x Infinite
- 夜光虫 – Nctluca
- Jacopo Benassi
このアーティストが抱える様々な制約は、日本においても大小様々な問題となって現れていると日々感じます(詳細は控えますが)。社会の意識的・無意識的な圧力とコンヴィヴィアルに付き合っていくためにはどうしたらいいのか。そんなことを改めて感じさせてくれる編集前記が、非常に素晴らしい内容だと感じました。
ドイツ、ブラジル、グルジアといった国々のアーティストが模索する「完全なる自律性(=GANRA)」。誌面の作り方や各アーティスト作品のインパクト、ベルリン在住の作り手の愛も感じて、最高の作品だと感じています。
※気になった方はこちらから購入できます。
文:ナガオカタケシ